世界初の「ハイレゾ認定」完全ワイヤレスイヤホンが日本上陸!

完全ワイヤレスイヤホンとしては世界初となる、日本オーディオ協会の「Hi-Res Wireless」ロゴを掲げたイヤホン、「NeoBuds Pro」が「EDIFIER」(エディフィアー)から登場し、7月29日から日本でもクラウドファンディングサイトを通じて販売を開始した。この機会に、「ハイレゾ」の周辺情報を整理しつつ、同製品のレビューをお届けしたい。

■完全ワイヤレスイヤホンは「快適」

今やイヤホンと言えば「完全ワイヤレス」が主流だ。登場当初は近未来的な装着スタイルがガジェットファンの心を掴み、その後は価格の低下が進んで接続安定性も向上するなどして「特殊なイヤホン」から脱却。今では、ケーブルに煩わされない「快適さ」が広く支持されている。

■完全ワイヤレスイヤホンには「弱点」もある

「快適」な完全ワイヤレスイヤホンだが、弱点が無い訳ではなかった。それは、音楽を聞くツールとして重要な「音質」だ。Bluetoothワイヤレス接続では、伝送帯域に限りがありため、音声信号を圧縮する必要がある。SBC/AAC/aptXというワードを一度は見たことがあると思うが、これらは音声信号のデータ量を圧縮して小さくするためのコーデックの種類を指す。一般的にコーデック自体の音質としては、aptX>AAC>SBCと言えるが、CD相当(44.1kHz/16bit)の音質を想定したものという点では近しいとも言える。

加えて完全ワイヤレスイヤホンの場合は、左右が独立していることから、その間で極わずかながら「時間差」が生じる。その程度は製品によって異なるが、この時間差が大きく、聴感上違和感を覚える製品も存在する。

■ハイレゾって何?

オーディオマニアの世界では、2000年あたりから、スペック上、CD(44.1kHz/16bit)の音質を超える「ハイレゾ」(ハイレゾリューションオーディオ)が話題だ。DVD-AudioやSACDといったディスクメディアで専用プレーヤーが必要なこともあり、一般的には知られざる存在だろう。その後、インターネットの普及に伴い、ハイレゾ音楽データのダウンロード購入と、PCで再生するスタイルも登場した。ここ最近ではAmazon Music HDやApple Musicがハイレゾストリーミングに対応したことで、一気にメジャー感が出てきた。

一般的なユーザーにとっては通信量の少なさが関心事かもしれないが、好きな音楽がより高音質で聞けるとなれば、興味が湧くのではないだろうか? 高品位データの伝送は通信網に少なからず負担を掛けることになるが、映像に比べると音声データは桁違いに小さいので、その点、ユーザーは特段に心配しなくて良いだろう。

■ハイレゾとBluetoothと「Hi-Res Wireless」ロゴ

ハイレゾの波は、Bluetoothワイヤレスにも波及してきた。ソニーの「LDAC」やQualcommの「aptX HD」が先行し、ほか、HUAWEIの「HWA」、そしてHWAをベースとするSavitechの「LHDC」が存在し、最大96kHz/24bit級の音声データに対応している。

ハイレゾの定義は国や地域によっても違いがあるが、これらのコーデックは全て「ハイレゾ級」と言って差し支えない。

日本では、「日本オーディオ協会」が定義した「ハイレゾ」が1つの大きな目安と言え、音源データについては、サンプリング周波数が48kHz以下の場合は量子化ビット数が20bit以上、同88.2kHz以上の場合は16bit以上、再生機器については96kHz/24bit以上の処理能力を求めている。

Bluetooth伝送を想定した日本オーディオ協会の「Hi-Res Wireless」(ロゴ)は、大きな項目として、同協会が認証したハイレゾ対応コーデック(現時点で、LDACとLHDC)の使用に加え、ハードウェアとして「96kHz/24bit以上の処理能力」、「40kHz以上を再生可能なアンプとドライバー」を備え、完全ワイヤレスイヤホンとしては特に「左右間位相差を±50μs以内に抑えられた製品」を対象としている点に注目したい。

■「NeoBuds Pro」レビュー

前置きが長くなったが、実際にメーカーから「NeoBuds Pro」のサンプル機をお借りしたので、その印象をレビューとしてお届けしたい。

製品最大の特徴は、世界初で、日本オーディオ協会の「Hi-Res Wireless」ロゴを冠した製品ということ。日本ではソニーの「WF-1000XM4」(6月25日発売)に「Hi-Res Wireless」ロゴが付いているが、世界的には「NeoBuds Pro」が3月に発売を開始したとのこと。

ほか、アクティブノイズキャンセリング機能、外音取り込み機能といった人気の定番機能も搭載している。

試聴は、Xiaomi Mi 11 lite 5Gと組み合わせ、ハイレゾ音源(96kHz/24bit/FLAC)ファイルを用いて行った。

まずは従来から存在するAAC接続で試聴。この時点で充分満足できる高音質で驚かされる。明瞭で抜けの良い中高域は耳触りが良く、深みと広がりを伴った量感たっぷりの低域音は音楽性が豊かで心地よく楽しめる。実の所、EDIFIERは歴史を持つオーディオメーカーで、最近はオーディオマニアも納得の高音質と手頃な価格を両立したアクティブスピーカーが世界的に大ヒットと飛ばしている。技術的にイヤホンとの関係あるのか否かは確認できていないが、堂々としたセンスの良いサウンドは通じるものを感じる。「NeoBuds Pro」は超コンパクトなイヤホンながら、DSPによるデジタルネットワーク(チェンネルデバイダー)とバイアンプ駆動と凝った構成で、中高音を担当するバランスドアーマチュアトライバー(高音質で定評のあるKnowles社製)と、低域を担当するダイナミックドライバーを個別に駆動。スペックや物量が全てではないが、ハイエンドオーディオに通じる拘りを感じるものだ。

次に、コーデックをスマホの設定画面でLHDCに切り替えて確認。

正直なとこと、AACと劇的に違う、とは言えないが、耳が肥えたオーディオユーザー、音に敏感な演奏者なら、音が出た瞬間の「鋭さ」に気づくだろう。全体的な印象として、エネルギッシュで鮮度が高く感じるものだ。しかしさらにその先があった。アプリ「Edifier Connect」ではLHDCのビットレートが選択可能で、初期値は接続性を重視した400Kbpsに設定されている。これを900Kbpsに変更し、再びスマホの設定画面でLHDCを確認すると、本機の最大能力を知ることができる。

違いは圧倒的。空間が広くなり、音の配置が立体的になり、繊細かつしなやかな音に生まれ変わる。とは言っても、全く違う音になる訳ではないので、音質に関心が薄いリスナーには違いが判らないかもしれない。しかし、そうしたユーザーの場合も、「声」に注意して聴くと、ディテールが豊かで、滑らかかつ抑揚の表現が豊かなことに気づくはずだ。Knowles社製のバランスドアーマチュアトライバーは、こうした「声」の表現を得意としているが、情報が高密度なハイレゾ伝送により、その長所がさらに活かされるようだ。

ハイレゾは周波数特性、つまり20kHzを超える高域に話が行きがちだが、サンプリング周波数の向上は鋭く音色を左右する音の立ち上がりをより克明に捉えることができ、量子化ビット数の向上は微細な音もより丁寧に記録再生できる。「NeoBuds Pro」では、そうしたハイレゾの良さが体感できた。

ほか、ノイズキャンセリング機能も優秀。ノイズキャンセリングは強力で、レベルを2段階で切替でき、用途や好みに合わせることができる。外音取り込み機能も搭載していて、アプリを用いるとレベルをスライダー形式で調整できる、性能と機能は中高級モデルといった内容。ノイズキャンセリング性能を重視するユーザーも満足できるレベルである。

充電器兼用ケースに設けたられたペアリングボタンや、主に充電残量を示すLEDの点灯パターンが表情豊かなど、細部に拘りを感じられるのも好ましい。

■まとめ

「NeoBuds Pro」は、音質や外観に拘りが感じられ、機能、スペック、品位と全方位で抜かりなし。クラウドファンディング直販ということもあり、流通マージンが無いこともあるが、価格に照らすとコストパフォーマンスは高く感じる。

LHDCが利用できるスマートフォンは新しめのAndroid端末に限られるが、SBCやAAC接続時の音質も良好で、特に日本でユーザーが多いiPhoneとの組み合わせ時はAACが利用可能。

ハイレゾ対応に魅力を感じる読者はもちろん、音質の良いノイズキャンセリング完全ワイヤレスを探しているなら、候補に加えてみてはいかがだろうか。